なぜ失った過去を語ってはいけないのか。欅坂46『語るなら未来を…』



欅坂46は、乃木坂46に続く坂道シリーズアイドル。2015年に誕生したばかりのグループなので、まだ初々しさがあります。このグループのデビュー曲は『サイレントマジョリティー』。メッセージ性の強い楽曲でスタートしました。可愛い楽曲も持つグループですが、メッセージ性が強い曲を持つのも特徴の一つ。2枚目のシングル『世界には愛しかない』に収録されている『語るなら未来を…』もメッセージ性の強い楽曲です。



“ガラス瓶 落として割れたら
元になんて戻せないんだ
何が入ってたかなんて
明かしても意味がない
アスファルトの上
広がった ただの黒い染み
もう 失った人生なんて語るな
ほんの一部でしかないんだ
手に入れたのは脆い現実と
飾られた嘘のレッテル
破片を拾い集めるな
語るなら 未来を…“


「心が一瞬声上げた」という歌いだしに続くこの歌詞「ガラス瓶 落として割れたら 元になんて戻せないんだ」。ことわざでいう「覆水盆に返らず」にあたります。一度した失敗は元に戻すことができない意味。ガラス瓶の中に「何が入ってたかなんて明かしても意味がない」と言い切る歌詞が続きます。ガラス瓶の中に入っていたものは、地面に落ちて「ただの黒い染み」になりました。「ただの黒い染み」という歌詞は、過去の出来事の象徴。「アスファルトの上」に広がっていることから、それが地面に染み込むような、とるに足らないものであることが分かります。

続いて間髪入れずに入ってくる「失った人生なんて語るな」という、かなりメッセージ性の強いサビの歌詞。この曲は、一貫して失った人生を語るなとうったえかけます。失った人生、後悔を語っても得られるのは「脆い現実と飾られた嘘のレッテル」だけだと言い切る歌詞。サビの振付は、動きが激しくなっています。「語るな」「集めるな」という語気が強めの歌詞を更に強調しているんですね。

“人は心の中に
ガラスの瓶がある
愛や夢を詰め込んで
割らぬように大事に
守っているけれど…”


後半の歌詞で、ガラス瓶の中に入っていたものが何なのかが判明します。ガラス瓶とは人の心の状態の象徴。人の心はガラスでできた瓶のようにもろく、崩れやすいものなんですね。この心のガラス瓶には「愛や夢を詰め込んで」あります。しかし、それは地に落ちれば黒い染みになってしまう脆いもの。このフレーズの直後の振付は、大勢のメンバーで平手をとらえる動きです。これは、平手に象徴されるような若い人であっても、過去にとらわれてしまうという危うさを表現しています。


“腹立たしさとか 悔しさは
思い上がりだよ”


「腹立たしさとか 悔しさは 思い上がりだよ」という歌詞が登場します。これはどういうことでしょうか?人は、終わったことに対して「腹立たしさや悔しさ」を抱きがちです。しかし、終わったことにいつまでも腹を立てていても、何も変わらないのです。思い上がりとは、うぬぼれていい気になること。過去を引きずるようなことは、うぬぼれでしかない。それほど過去に意味はないのです。

“言葉にすれば安い願望と
オーバーに盛った真実
過去など自己嫌悪しかない
語るなら 予言を…”


この曲は、「語るなら予言を…」というフレーズで終了します。未来のことを語れば、それが予言になるという歌詞。過去を悔やむよりは、未来を語り予言してみろという内容です。当たる予言というのは、未来を語った結果に過ぎない。だから、わざわざ語るなら未来のことにしようとうったえているんですね。

なぜ、このような歌詞を欅坂46に持ってきたのでしょうか?それは、このグループがまだ始まったばかりだから。「失った過去を振り返ることなく、後悔なく活動を続けてほしい」という思いが込められているのです。『サイレントマジョリティー』に続く、聴く者と歌うメンバーにうったえている一曲。



TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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